イラスト・漫画制作の価格の決め方

こんにちは。1児のママ兼イラストレーターのたぐちまりです。
今回はイラストレーターにイラストや漫画制作を依頼した時の制作料金について、私なりに考えたことをまとめてみました。

イラスト・漫画制作の料金はどうやって決まる?

今まさにイラストの依頼をしようとお考えの方は、気になるところだと思います。
ちなみにこの記事に具体的な値段は出てきません。イラスト業界の料金相場は存在しますが、各イラストレーターさんによって基本料金の時点でバラつきがあると思います。若手か大御所かでだいぶ変わってくるでしょうしね。さらに依頼の条件によって大幅に価格は変動します。

今回伝えたいことは、その依頼による価格変動の条件はどんなものがあるのかというところです。この辺りはどのイラストレーターさんも大体同じなのかな〜と思っています。

頼みたいイラストレーターはピックアップしたけど、見積もりが出るまで料金はわからない…という事が多いと思います。予算を削りたい場合、次にご説明する条件を把握していれば可能な面もあるのではないでしょうか。
それでは順番に見ていきましょう。

イラスト・漫画制作の価格変動の条件

①制作物の難易度

難易度と言っても、制作する側じゃないしよくわからないんですけど…って感じですよね。3つに分けてご説明します。

まずは線画のタッチです。線の数や太さ、描き込み具合、人物であれば頭身の高さなど線画だけでもさまざまな描画スタイルがあります。
イラストレーターは同じタッチを一貫して描いて独自の世界観を表現するタイプと、複数のタッチを依頼内容によって描き分けて柔軟に対応するタイプに分かれるかと思います。後者の方はタッチによって制作難易度が違うので、価格も比例して変動することが予想されます。
要はシンプルな絵であるほど価格は下がり、複雑な絵であるほど価格は上がると思ってもらえばいいですね。
誤解がないように言っておきますが、あくまで同じイラストレーターさんでのタッチの比較の話です。必ずしも『シンプルな絵を描くイラストレーターは価格が安くて、複雑な絵を描くイラストレーターは価格が高い』という意味ではありません。

次にカラーの場合の塗り方です。水彩やパステル調、アニメ塗り(ベタ塗り)、厚塗り(重ね塗り)やブラシ塗り(ぼかしを多用した塗り)など様々な塗りのパターン(種類)があります。
アニメ塗りに比べると、厚塗りのような作業工程の多い塗り方は価格が上がることが多いかもしれません。

アニメ塗りのイラスト
アニメ塗り
水彩のイラスト
水彩風
厚塗りのイラスト
厚塗り風

最後に対象物の数や形についてです。例えば人物を1人描くのと3人描くのとでは、作業時間が変わりますね。対象物の数が増えるほど価格は上がることが多いです。
人物だけでなく、小物の数や背景の有無も含まれます。小物の数が多かったり背景があると、イラストとしてのクオリティが上がる分、複雑な絵になっていくので時間を要します。
対象物が何かというところも関わってきます。例えばシンプルなワンピースと繊細なディテールにこだわったドレスでは、作業時間=制作料金が変わってくる可能性が高いです。

②仕上がりイメージ

依頼する側で仕上がりイメージがどの程度明確になっているかで、料金が変動することがあると思います。そこ重要?と思うかもしれませんが、ちょっと詳しく説明していきます!

まず制作に入る前に、イラストレーターとクライアントで打ち合わせをします。『どういった用途でいつまでにこんなふうなイメージで仕上げたい』という点を明確にしていく必要があるのですが、具体的なイメージが決まっているのとふんわりとしか決まっていないのとでは、イラストレーター側の工程で差があるのです。
もちろん大まかなイメージだけだとダメというわけではなく、むしろこちらが提案することも仕事の内なんですが、工程が少ないということは割引き対象になるかも…ということが考えられます。

例えば商品のPR漫画の制作で、『女性ウケが良い感じの漫画にしてほしい。具体的な内容はお任せする。』という大まかなイメージのみの場合と、『ストーリーのセリフなどのシナリオは用意している。登場人物のルックスやタッチは参考資料を用意している。』という具体的に決まっている場合とでは、作業時間に差が出てくるのでその辺りを価格に反映するのは自然かなと個人的には思います。

③色数

これは想像しやすいかと思います。一般的にモノクロのイラストとフルカラーのイラストを比べると、色数が多いフルカラーのほうが値段が上がります。
線画制作(+黒ベタ塗り+トーン)に着色が加わるので、作業工程が増えるためです。
例えば書籍内の挿絵や漫画などはモノクロのものが多く、ウェブサイトや広告などで使用するものはカラーで制作することが多いです。

あとはカラーと言ってもモノクロ+差し色(1~2色程度)といった色の使い方をする場合もあります。
この辺りは作風によって個人差があると思いますが、フルカラーよりはモノクロの作業工程に近いため予算を抑えることができる可能性はあります。

④納期

イメージしていただきたい。
一つの作品を一から制作するのに、納期が2週間あるのと2日しかないのとではだいぶ違います。
納期が短いほど制作者は高速で作業を進めないといけないし、他のお仕事よりも優先しないといけない場面も出てくるかと思います。

納期が短い場合、特急料金という形で上乗せされるケースが多いと思います。
短いとはどのぐらいの期間を言うのかは、イラストレーターさん個人のスピードにもよるし一概には言えないので相談次第です。
逆に余裕を持った納期で提案する場合は、割引き対象になることもあるかもしれません。

⑤使用媒体

イラストや漫画を何に使うのかというところも関係します。ここで『使用料』についてのお話をさせてください。

制作物には制作費とは別に、使用料というものがあります。イラストや漫画を雑誌や広告などの媒体で使用することで発生する料金です。請求書に使用料という記載がない場合は、制作費の中にあらかじめ使用料も含まれていると考えられます。

ここで大事なのは、複数の媒体で使用する場合です。最初に依頼した時に『ポスターのみに使用します』となっていたとします。その後、別の媒体(例えばサイトのメインイラストなど)に使用したいとなった場合は、『二次使用料』が発生します。ちなみに私は二次使用料は制作費の50%で設定しています。最初のオーダーの時点で2つ以上の媒体で使用することが決まっている場合は、制作費に媒体分の使用料が加算されるというわけですね。

『イラスト制作を依頼して制作物を受け取った』=『イラストをいつどこで何回使ってもOK』というわけではありません。
トラブルの元になってしまうので、使用料が適用される使用範囲・著作権についてはしっかり把握して不明な点は確認しておく必要があります。

商用目的としているからには、イラストや漫画を使うことで得られる利益があります。使用媒体が増えるということは、それに伴い利益も増えます。

著作権が制作者側にあるので、契約時の範囲外では自由に使えないのです。ただし、著作権を譲渡するケースでは話が変わってきます。著作権譲渡に関しては後述します。

あとキャラクターデザインに関しては、二次使用されることが前提ですので、大体それも含めての料金設定になっていると思います。それか著作権買取りにしているかですね。

また、使用媒体の規模も関係します。個人商店のチラシで使用するのと大手出版社の雑誌に掲載するのとでは、露出の多い後者のほうが使用料は高くなる場合が多いと思います。

中には二次使用料をサービスしていたりと、イラストレーターによって規定が違います。イラストレーターに直接依頼する際は、基本的には使用料もセットでかかるものだと認識しておいたほうが無難です。料金の発生に関しては、そのイラストレーターのサイトに詳しく注意書きがされている場合もありますが、無い場合は見積もり時によく確認したほうが安心ですね。

⑥使用期間

上記で触れた『使用料』ですが、使用する期間でも変動することがあります。期間限定で使用することを目的としたものと使用期限がなくいつでも使用可能であるものを比べると、使用期間が長い=露出が多いのでその分値段が上がる可能性があります。

使用媒体とは別に使用期間も厳密に定めておいたほうが、トラブルを回避できると思っています。イラストレーター側で決めるというよりクライアント側の希望に添う形になると思うので、最初の打ち合わせなどで決めておいたり、その都度相談するといったことが必要ではないでしょうか。

⑦修正回数

修正回数や程度に応じて追加料金が発生する場合があります。
イラストレーター側としては、修正回数を極力減らしたいのが本音です。ラフの段階での修正は容易なのであまり困らないと思いますが、清書に入ってからの修正は場合によっては一から全部描き直しということもあり得るからです。
かと言って修正ゼロで一発OKというのはなかなか難しいのでは…とも思います。同じ思考回路を持った人間同士であれば、相手のイメージした通りの作品を作ることが可能ですがそうもいきません。色を塗ってみてから『思ってたのと違った…』というのはよくあることだと思います。

私はラフ時点での修正は何回でも無料で、清書に入ってからの修正は2回まで無料でと定めています。ただしラフ以降の大幅なポーズ変更や構図の変更は描き直しの範囲が広いので、色変更や部分的な修正のみでお願いしていますが…。

イラストを提供する側からすると、できる限りクライアント様のご要望に応えたいと考えて制作しているはずです。
お互いに気持ち良く効率良くスムーズなお取り引きをするために、イメージのすり合わせと大きな修正はラフの段階で済ませておけるといいですね。

イラストレーターによっては何度でも修正対応できるけど、その分修正料金込みの価格にしていたりするところもあります。その辺りも最初に確認しておいたほうがお互いにとって良いですね。

著作権譲渡をするのとしないのとでは値段が全然違う?

著作権は、制作したイラストレーター側かお金を払ったクライアント側のどちらにあるのか?これは大事なことです。著作権は制作者にあります。しかしイラストレーターによっては、著作権ごと買い取ってもらうことを許可している場合があります。

著作権が譲渡されると、二次利用や改変など自由にできるようになります。具体的には著作者人格権もあるので、完全に自由ではないんですけど…。
制作したイラストレーターは著作権を譲渡すると、そのイラストを自由に掲載することができなくなります。ちなみに私は著作権譲渡はしておりません。ただ、著作権の買取りはその条件に見合った価格が設定されていると予想できます。

クラウドソーシングでイラスト制作を依頼するケースでは、クライアント側に著作権も譲渡されるように最初から規定されていたりしますが、イラストレーター側がそれで承諾しているからです。
普通は著作権は制作者に帰属しますので、混同しないようご注意ください。

まとめ

いかがでしたか?
イラストレーターさんが料金表を公表しているケースってあまり見ないし、どういうふうに料金が決められるのかいまいちわからないと思います。
価格変動の条件はどのイラストレーターさんも概ね同じだと思うので、参考にしていただければ幸いです。
私も随時イラスト制作承っていますので、お気軽にご連絡ください!